「コロナワクチンを打つと5Gの電波で体を操られる」「東日本大震災は、実は人工地震だった」――こうした明らかに根拠のない、意図的な偽情報による主張が「陰謀論」と呼ばれるものです。 長引くコロナ禍に不安が高まり、いまデマや陰謀論が世界的に拡散しています。SNS空間では「信じたいものだけを信じる」という姿勢を、一層助長しているようにみえます。 2016年のトランプ前米大統領の就任式は、オバマ氏の時に比べて観衆は目立って少なかったのですが、ホワイトハウスは頑として「過去最多」の記録を譲りませんでした。メディアから観衆の写真など「動かぬ証拠」を示されて、トランプ氏の側近は「これはオルタナティブ・ファクト(もう一つの事実)なのだ」と言い放ったのです。 SNS社会にあって陰謀論がクローズアップされたのには、理由があります。SNSの事業者は、少しでも長い時間アプリを使ってもらうため、利用者の趣味や考えに近い情報を集めてきます。利用者側にとって、自分の都合にあう情報ばかりに囲まれる「フィルターバブル」という現象です。それは自分と似た価値観の「泡(バブル)」に閉じ込められた利用者が、異なる価値観を容認できなくなることでもあります。 「フィルターバブル」は、自分とは違う異論や反論などと接触する機会までが遮断され、フェイク(偽)ニュースを信じたり、極端なナショナリズムの主張や陰謀論に固執したりする弊害が指摘されています。 本講では、流言・デマの典型的なパターンとして知られる、2011年の東日本大震災の直後に発生した「コスモ石油の黒い雨」など、具体的なデマの発生ケースを取り上げながら、そのメカニズムや人間心理を考えていきます。 そして何より、受講者の皆さんに、そうした流言・デマ、陰謀論にだまされない「情報リテラシー」の考え方を理解してもらいたいと思います。
更新日: 2022/05/01 (日) 20:34